計算式はひとつだけ
家電の電気代は、次の1本の式で求められます。
電気代(円)= 消費電力(W)÷ 1000 × 使用時間(時間)× 電力量単価(円/kWh)
Wを1000で割るのは、電力量の単位が kWh(キロワットアワー=1000Wの機器を1時間使ったときの電力量)だからです。単価は契約プランによって変わりますが、目安として広く使われているのが31円/kWh(全国家庭電気製品公正取引協議会が定める新電力料金目安単価、2022年7月改定)です。本記事の試算もこの単価を使います。
実際の請求額には基本料金・燃料費調整額・再エネ賦課金が乗るため、この式で出るのは「その家電を使ったことによる増分」です。機器どうしを比べる目的なら、この増分だけで十分に判断できます。
在宅ワーク家電の消費電力と月額の実例
在宅ワークで使う機材を、1日8時間・月20日(=月160時間)稼働で計算するとこうなります。
| 機器 | 消費電力の目安 | 1時間あたり | 月160時間 |
|---|---|---|---|
| ノートPC(作業時) | 30W | 0.93円 | 149円 |
| 27インチモニター | 30W | 0.93円 | 149円 |
| デスクライト(LED) | 10W | 0.31円 | 50円 |
| サーキュレーター(弱) | 20W | 0.62円 | 99円 |
| 超音波式加湿器 | 25W | 0.78円 | 124円 |
| 足元パネルヒーター | 120W | 3.72円 | 595円 |
| セラミックファンヒーター(強) | 1200W | 37.2円 | 5,952円 |
この表から読み取れることは2つあります。
ひとつは、PC・モニター・照明といった「常時つけっぱなしのもの」は、合計しても月350円程度にしかならないということ。在宅ワークで電気代が上がる主因はここではありません。
もうひとつは、暖房が桁違いに大きいこと。セラミックファンヒーターを常用すると、それ1台でPC・モニター・照明の合計の17倍近くになります。電気代を下げたいなら、まず見るべきは熱を出す機器です。
「W数が大きい=電気代が高い」ではない
ここが最も誤解されやすい点です。電気代を決めるのはW数と使用時間の掛け算なので、W数が大きくても使用時間が短ければ安くなります。
| 機器 | 消費電力 | 1回の使用時間 | 1回あたり | 1日1回・月30日 |
|---|---|---|---|---|
| 電気ケトル(1L沸騰) | 1250W | 約5分 | 3.2円 | 97円 |
| ドライヤー | 1200W | 約10分 | 6.2円 | 186円 |
| 電子レンジ | 1000W | 約3分 | 1.6円 | 47円 |
| ロボット掃除機(稼働) | 40W | 約60分 | 1.2円 | 37円 |
1250Wの電気ケトルは、W数だけ見れば表の中で最大です。しかし5分しか使わないので、1回3.2円。120Wのパネルヒーターを8時間つけた場合(29.8円)の約9分の1にすぎません。「W数が大きい家電は電気代がかかる」という直感は、使用時間を無視しているぶん外れます。
待機電力はどこまで気にするべきか
電源を切っていても消費される待機電力は、1機器あたりおおむね0.1〜1W程度です。1Wの機器を1年つなぎっぱなしにした場合の電気代は次のようになります。
1W ÷ 1000 × 24時間 × 365日 × 31円 = 年間約272円
これを高いと見るか安いと見るかは判断が分かれますが、少なくともコンセントを抜いて回る手間に見合うかは疑問です。同じ労力を暖房の設定温度を1度下げることに使ったほうが、金額のインパクトははるかに大きくなります。
カタログのW数は「最大値」であることに注意
仕様表に書かれた消費電力は、多くの場合定格=最大消費電力です。実際の平均消費電力はそれより小さくなります。
- ノートPC:アダプタが65Wでも、文書作業中の実消費は15〜30W程度。65Wは充電と高負荷が重なったときの上限です。
- エアコン・ヒーター:サーモスタットで出力が上下します。カタログには「最小〜定格〜最大」の3つが書かれていることが多く、実測は最小と定格の間に収まります。
- モニター:輝度設定で大きく変わります。最大輝度と50%輝度で消費電力が倍近く違う機種もあります。
したがって、この記事の計算式で出る数字は「上限に近い見積もり」と考えてください。機器どうしの比較には十分使えますが、請求書とぴったり一致することは期待しないほうが正確です。
正確に知りたいならワットチェッカーで測る
カタログ値ではなく実測値が欲しい場合は、コンセントと機器の間に挟むタイプの電力計(ワットチェッカー)を使うと、瞬時電力と積算電力量が読み取れます。これで1日分を測れば、上の式に入れる「実際のW数」が確定します。
測るときのコツは、1時間の瞬間値ではなく24時間の積算値を見ることです。多くの家電は稼働と待機を繰り返すため、瞬間値だけでは平均を見誤ります。
「同時に使えるW数」には上限がある
電気代とは別に、もうひとつW数が効いてくる場面があります。ブレーカーの容量です。家庭の電気は「契約アンペア(家全体)」と「分岐回路(部屋ごと)」の二段構えで制限されており、どちらを超えても落ちます。
100Vの回路では W ÷ 100 = A(アンペア) で換算できます。分岐回路は一般に15A(1,500W)か20A(2,000W)なので、1つの回路に載せられるW数の合計はこの範囲までです。
| 機器 | 消費電力 | 100Vでの電流 |
|---|---|---|
| ドライヤー(強) | 1,200W | 12A |
| 電気ケトル | 1,250W | 12.5A |
| 電子レンジ | 1,000W | 10A |
| セラミックファンヒーター(強) | 1,200W | 12A |
| ノートPC+モニター+照明 | 約70W | 0.7A |
この表を見ると、熱を出す家電は1台で15A回路の8割を使ってしまうことが分かります。洗面所でドライヤー(12A)を使いながら洗濯機を回すと、15A回路なら残りは3A=300W。洗濯機の運転電力が300Wを超えていればブレーカーが落ちます。逆に、在宅ワークの機材はすべて足しても1A未満なので、同じ回路に何台つないでも容量の心配はありません。
「冬になるとブレーカーが落ちる」という家では、暖房器具を別の部屋のコンセント(=別の分岐回路)に移すだけで解決することがあります。分電盤を開けば、各ブレーカーに担当する部屋名と定格(15A / 20A)が書かれています。
自分の単価を検針票から出す
ここまでは目安単価31円/kWhで計算してきましたが、実際の単価は契約プランで変わります。正確に出したいなら、検針票(または電力会社のマイページ)から次の2つを拾ってください。
- 請求金額の合計(基本料金・燃料費調整額・再エネ賦課金を含む総額)
- 使用電力量(kWh)
実効単価(円/kWh)= 請求金額の合計 ÷ 使用電力量
この実効単価は、基本料金や賦課金を含むぶん、電力量料金の単価より高く出ます。それでも「この家電を1時間使うと家計にいくら乗るか」を知る目的なら、こちらのほうが実感に近い数字になります。出した単価を、この記事の各表の「31円」の位置に置き換えれば、自分の家の金額に読み替えられます。
CONCLUSION
W ÷ 1000 × 時間 × 31円。これだけ覚えれば、どの家電でも自分で判断できる。
在宅ワークの常時稼働機材(PC・モニター・照明)は合計しても月350円程度で、削減余地はほとんどありません。効くのは熱を出す機器の使用時間です。W数の大小ではなく「W×時間」で見る癖をつけると、買う前に電気代を見積もれるようになります。



この記事へのご指摘・ご質問
記事の誤り、追加で知りたい点、実際に使った感想などをお寄せください。事実誤認のご指摘は一次情報で確認のうえ本文に反映し、記事末の更新履歴に残します。
※いただいたコメントは編集部が確認したうえで公開します。メールアドレスは公開されません。